ダンプトラックの歴史


1.  リジッドダンプトラックの歴史
1-1 リジッドダンプトラックの起源

 リジットダンプトラックはコマーシャルトラックをベースに、米国ユークリッド社によって1934年に開発された15t積みダンプトラックが最初と言われている。
 国内で最初に使われたのは、昭和28年(1953)に着工した佐久間ダム建設工事で、ユークリッド社製の15t積み(図1)が使用された。その後、御母衣ダム工事には20t積み、九頭竜ダム工事には27t積みと、次々と大型化された輸入車が使用されてきた。


図1


 国産車では、国土復興事業と政府の国産化政策により、昭和31年(1956)に国産車の15t積みが開発され、佐久間ダムに投入された。

1-2 リジッドダンプトラックの進化
 1970年代に入って日本は高度成長期に入り列島改造政策とも相まって、空港、高速道路建設、大規模住宅地造成など大型工事が多くなった。一方海外では、炭鉱の露天掘り(オープンピット)が本格化して、ショベル&ダンプ工法が脚光を浴びるようになった。このニーズに応えて米国を中心とした各ダンプトラックメーカはシリーズの拡大を行うようになった。
 国産車も昭和45年 (1970)には本格的な重ダンプトラックとして32t積みが開発された。昭和50年(1975)代には更に大型化が進み、昭和49年(1974)に68t積み、昭和50年(1975)に46t積み、昭和53年(1978)に120t積み、昭和56年(1981)に78t積みの生産が開始された。これらの国産大型車は輸入車とともに、その後の大規模工事の工期短縮に活躍し、平成6年(1994)に開港した関西新空港建設時には78t積みから136t積みが埋立用土砂採取現場で使われた。
 最近では更に大型化が進み、石灰石鉱山においては190tから220t積みが稼動している。

1-3 本格的な重ダンプトラックの出現
 性能、機能からみると、現在のリジットダンプトラックの原型ができたのは昭和32年(1957)頃であり、トルクコンバータ付きトランスミッションとハイドロニューマチックサスペンションが採用された。積載時の長距離降坂時に十分な連続ブレーキ容量(いわゆるリターダ)としては、油を攪拌することによりエネルギーを吸収するハイドロリックリターダが一般的であったが、昭和37年(1962)に開発された32t積みでは後輪に油冷多板式ブレーキが採用された。又、大型化と運転居住性向上要望に伴い昭和50年(1975)に発売された46t積みでは電子制御式フルオートマチック式トランスミッションが採用され、その後一般的となった。生産性向上の面からは重量当たりエンジン出力が増加され、32tクラスのエンジン出力は昭和40年(1965)代半ばに300kW未満であったものが、現在では約380kWになっている。安全性の点ではエマージェンシーブレーキとエマージェンシーステアリングが殆どの機種で標準装備されるようになった。

1-4 最近の動向
 最近の動向としては、従来からの生産性及び安全性の向上、快適化、運転容易化等に加え、対環境性向上がより重要になってきている。燃料消費量を悪化させずにエンジンからの有害物質排出量を押さえるために、エンジンの電子制御化が進んでいる。車両の各装置の電子制御化も進んでおり、以前から電子制御化されていたトランスミッションの自動変速では変速ショックの改善がなされ、滑りやすい路面でも安定して走行できるアンチロックブレーキやサスペンションのモードを車両の状態によって自動的に切り換えるオートサスペンション、積載量や車両の異常を表示、管理するモニタ等、電子制御により高度化した機能が開発されている。又、平成2年(1990)に発生した雲仙普賢岳噴火による災害復旧工事ではオペレータの安全確保のため78t積みの無人運転が実施された。またGPSを利用して車両の位置を計測することにより、海外の大規模鉱山において「無人化システム」も確立しており、今後複数車両を同時に管制していくことも可能となった。
 また車両の高稼働率を維持するために、不具合の発生を未然に防止することを目的とした車両の稼動状況をデータとして管理する「機械管理システム」も搭載されるようになってきている。このシステムは車両の状態を遠隔地で把握することも可能となっており、最近要求が高まっているR&M(Repair & Maintenance)コストの低減にも効果がある。

2. アーティキュレートダンプトラックの歴史
 アーティキュレートダンプトラックは、トラクタとトレーラの組合せに回転自在なジョイント機構が加わったことから誕生した。世界で最初の量産は、1966年のボルボ社の10t積みの発売とされている(図2)。


図2

 日本国内では昭和53年(1978年)に18.5t積みが輸入され、関越自動車道建設工事に使用されたのが最初である。 全輪駆動方式とワイドベースタイヤそして独特のサスペンション機構により、軟弱地および不整地での走行性能に優れ、天候や地盤に左右されずに稼働できることから、宅地やゴルフ場の造成、道路工事等に使用されてきた。 現在では、世界で18t積みから最大45t積みまでが稼働している。