規格の解説


ISO(国際標準化機構)規格

ISO規格の概要
 油圧作動油は建機ならびに一般産業用に広く使用されているにもかかわらず、これまで世界的に統一された製品規格は存在せず、Denison社、Cincinati Machine社、U.S Steel社などの米国民間会社が規定した製品規格が主に使用されていた。世界的な規格に近いものとして、MIL規格(米軍規格)が存在するが、航空用作動油など特殊用途であり、一般的な作動油規格とは言い難い。
 一方、ISO規格は欧州を中心に規格制定が進められた経緯があり、粘度グレードについてはISO3448に工業用潤滑油粘度グレードが規定され、粘度表示の基準となっている。油圧作動油(液)の機能別製品分類もISO6743-4としてすでに規定されていたが、実際の製品規格としては長年規定されてこなかった。ISO6743-4で規定されている油圧作動油(液)の製品分類を表1に示す。

表1ISO6743-4による油圧作動液の分類


 その中で、1997年に鉱油系油圧作動油の分類としてISO11158がようやく制定され、続いて難燃性油圧作動液の製品標準規格が1999年にISO12922として、最後に2003年に生分解性油圧作動油の製品標準規格がISO15380として制定された。
 これらのISO規格の基本的な位置付けは、現状ではあくまで油圧作動油(液)の標準的規格として、製品を選択する際の指針あるいは性能レベルの足切り的な意味合いで使用することであろう。実際に各建機メーカーあるいは、各油圧機器メーカーが油圧作動液を推奨するときには、このISO規格なりに自社の規格に基づき、さらには市場実績などを加味して行うことになると思われる。以下、各機能別にISO製品規格の概要について紹介する。


1-2)ISO11158鉱油系油圧油規格内容

 ISO11158では、ISO6743-4で規定された6種類の鉱油系油圧作動液について各粘度グレード毎に製品規格を設定している。全ての内容については、ISO規格原文を参照していただくとして、代表的なVG46グレードについての規格内容を表2にまとめて示した。なおカテゴリーの内、HGについては、VG32とVG68しか規定されていないので、VG68について規格内容を示した。
> 表2に示されているように、HL規格はR&Oタイプ(防錆剤と酸化防止剤添加)が含まれており、無添加鉱油のHH規格に規定されていない銅板腐食、防錆性、泡立ち性、放気性、酸化安定性の項目が追加されている。一方HLに更に耐摩耗添加剤を加えたHMには、さらに耐摩耗性の規格項目である、FZG,V104Cベーンポンプ試験が規定されている。市販の多くの油圧作動専用油はこのHM規格に該当するものと思われる。油圧作動油(液)のISO規格の耐摩耗性には、ギヤ試験であるFZG試験を規定しているのが大きな特長である。HL及びHMの粘度温度特性を改善したものが、HR及びHVであり、粘度指数について数値で規格化すると共に、流動点については低い値を要求している。建機用油圧作動油として、最も適切なのはHV規格と考えられる。
 なおHGについては、工作機械用としての性能を持った油圧作動油と定義されるが、スティックスリップに関する要求項目はまだ制定されていない。

1−3)ISO12922難燃性油圧作動液規格内容

 ISO12922には6種類のカテゴリーで種別された油圧作動液の規格内容が示されており、規格内容を表3に示した。規格は水80%以上を含むHFAE及びHFASとその他の油圧作動液に分類され、その規格内容は大きく異なっている。また現時点ではHFDR(リン酸エステル)とHFDU(その他合成油)は同一の規格内容となっている。HFAE及びHFASは比較的簡単な規格内容となっており、高含水タイプのため難燃性試験も規定されていない。
 一方HFBからHFDについては、乳化安定性、貯蔵安定性、せん断安定性、シール適合性試験など多くの規格項目が含まれいる。難燃性の試験も規定されており、3種類の試験法が規定されている。耐摩耗性はベーンポンプ試験、高速四球試験、FZGギヤ試験などが項目として含まれているが、個別の要求値はなく、多くは供給者と使用側の協議により制定されることとなっており、それだけ同一カテゴリ−でも製品の性能の幅が大きいことを示している。

1-4)ISO15380生分解性油圧作動油規格内容
 2003年に制定された最もあたらしいISO15380の規格の概要を表4,5に示した。
 表4には、ISOに規定されている生分解性規格を示し、表5には作動油としての規格内容を示した。
 生分解性はISO14593もしくはISO9434で規定された生分解性試験法を用い、28日間の試験で生分解率60%以上が生分解性油圧作動油として認められる。生分解性の他に、急性魚毒性などの毒性試験も含まれている。
 油圧作動油としての要求項目は鉱油系油圧作動油に比較的近いが、エステルの酸化安定性、、水混入に対応するため複数の酸化安定性試験などが規定されている。耐摩耗性試験はFZG試験、ベーンポンプ試験が具体的数値で要求されており、FZGの規格数値は鉱油系油圧作動油と同じ要求値である。

表2 ISO11158(主にVG46)の規格内容
ISO記号   HHHLHMHRHVHG(VG68)
分類<  無添加鉱物油HH+R&OHL+耐摩耗性HL+粘度温度特性HM+粘度温度特性HM+耐スティックスリップ性能
密度mg/cm3報告報告報告報告報告報告
  報告報告報告報告報告報告
外観  透明透明透明透明透明透明
引火点min
 COC
 PM
 

 
180
168
 
180
168
 
180
168
 
180
168
 
180
168
 
180
168
動粘度
@40℃
 
mm2/s
 
41.4-50.6
 
41.4-50.6
 
41.4-50.6
 
41.4-50.6
 
41.4-50.6
 
61.2-74.8
粘度指数 報告報告報告130130報告
流動点max-6-12-12-36-36-9
酸価mgKOH/g報告報告報告報告報告報告
水分max0.050.050.050.050.050.05
銅板腐食
@100℃max
 
3h
 
 
2
 
2
 
2
 
2
 
2
防錆性蒸留水合格合格合格合格合格
泡立ちmax
Seq1
Seq2
Seq3
ml/ml  


 
150/0
75/0
150/0
 
150/0
75/0
150/0
 
150/0
75/0
150/0
 
150/0
75/0
150/0
 
150/0
75/0
150/0
放気性
@50℃Max
 
minx
 
−x
 
10x
 
x
 
12x
 
12
 
 
抗乳化性
@54℃max
@82℃
 
min
min
 
報告
−x
 
30
 
30
 
報告
 
報告
 

せん断安定性
max
@40℃
 
 
 
10
 
 
10
 
シール性能 報告報告報告報告報告報告
酸化安定性
酸価増加max
不溶分
@1000h
mgkOH/g
mg
 

 
2.0
報告
 
2.0
報告
 
2.0
報告
 
2.0
報告

FZGギヤ
min
不合格
ステージ
 
 
 
10
 
 
10
 
10
ベーンポンプ
試験
 
mg
 
 
 
報告
 
 
報告
 
報告

表3 ISO12922難燃性油圧作動液規格内容
ISO記号 HFAEHFASHFBHFCHFD(R―U)
分類 O/W乳化型ケミカルソリューションW/O乳化型水+ポリマーリン酸エステル及びその他
VG 46−10022−6815−100
外観 
水分
  min
%(m/m)
%(V/V)

80

80

40
≧35
≦0.1
泡立ち max
  25℃
  50℃
  100℃
  25℃
ml/ml  
300/10
300/10
300/10
 
300/10
300/10
300/10
 



 
300/10
300/10

300/10
 
300/10

300/10
300/10
放気性 max
@25℃
@50℃
 
min
min
 

 

 

 

25(VG46)
 

15(VG46)
pH@20℃ 6.7−11.06.7−11.06.7−11.0
乳化安定性max
600h@50℃
分離油分
クリーム層
 
Rating
%(V/V)
%(V/V)
 
2A-2R
Trace
0.5
 


 


 


 


乳化安定性max
1000h20℃
水分変化425ml
水分変化125ml
分離油分
分離水分
 
 
%
%
ml
ml
 
 



 
 



-
 
 


10
 
 



c
 
 



乳化安定性max
48h 720℃
分離油分
分離水分
 
 
ml
ml
 
 

 
 

 
 
3
1
 
 

 
 


乳化安定性max
336h@-
10/188@20℃
分離油分
分離水分
最大水分変化5ml
平均水分変化5ml
 
 
 
ml
ml

 
 
 



 
 
 



 
 
 
2
1
15
10
 
 
 



 
 
 



酸価mgKOH/g
腐食防止性 合格(C)合格(C)合格(C)
せん断安定性
100bar/250cycle
粘度変化@20℃
粘度変化@40℃
粘度変化@100℃
PH変化
水分変化max
酸価変化
 
 



 
%<
mgKOH/g
 
 





 
 





 
 
±15
±15



±0.50
 
 



±1.0

 
 
±10
±5
±7


±0.50
密度@15℃mg/cm3
シール適合性
NBR1,EPDM1&FPM1
60℃@180h max
体積変化 max
硬さ変化
引っ張り強度変化
伸び変化
 
 
 

IRHD
IRHD
 
 
 

-7/+2

 
 
 

-7/+2

 
 
 



 
 
 



 
 
 



シール適合性
NBR1,68℃@180h
体積変化 max
硬さ変化
引っ張り強度変化
伸び変化
 
 
 

IRHD
IRHD
 
 
 



 
 
 



 
 
 

-7/+2

 
 
 

-7/+2

 
 
 



シール適合性
NBR1,EPDM1&FPM1
100℃@180h
体積変化 max
硬さ変化
引っ張り強度変化
伸び変化
 
 
 

IRHD<
IRHD
 
 
 



 
 
 



 
 
 



 
 
 



 
 
 

-7/+2

スプレー発火特性Rating
Wick flame
persistence
Rating
 

 

 
合格
 
合格
 
合格
 
Manifold
発火試験
Rating
 

 

 
合格
 
合格
 
合格 
酸化安定性max
酸価増加
重量減少
@1000h
mgkOH/g
mg
 

 

 

 

 
1.5
1(Fe),2(Cu)
貯蔵安定性
pH増加max
不溶分
透明度
 
 
% 
 


 


 


 

<4
 


<18/16
加水分解安定性
酸価増加
 
mgKOH/g
 
 
 
 
 
ベーンポンフ
試験
 
mg
 
 
 
 
 
高速四球mm
FZG
ギヤ試験
不合格
ステージ
 
 
 
 
 

c)テスト法、要求値ともこのタイプの作動液には必ずしも適切でない。
d)報告。
h)測定方法や規格値は供給者と使用者との取り決めに従う。
j) 製品の外観は透明で、直径約10cmのガラス容器に入れて室温、通常の肉眼で見える明るさの中で、異物が確認されないこと。
m)ISO15029に規定されている3種類の方法は、必ずしも比較できる条件ではない。しかしながら一つの試験条件下の性能のみが要求される。方法と規格値はそれゆえ供給者と使用者間の合意による。報告されるデータの比較油は、使用する試験法による。

表4 ISO15380での生分解性試験規格内容
試験項目単位要求値試験方法、試験規格
生分解性、min60ISO 14593 or ISO 9434
毒性
急性魚毒性、98h、LC50、min
急性ミジンコ毒性、48h、EC50、min
バクテリア阻害、3h、EC50、min
 
mg/l
mg/l
mg/l
 
100
100
100
 
ISO 7346-2
ISO 6341
ISO 8192
注 生分解性および水生毒性試験は GLP(Good Laboratory Practice)に基づき行われるものとする。
水溶性の油圧作動液は引用されたテスト方法によって試験を行う。水への溶解性の小さい油圧作動液は、ASTM D6081により調整した水に可溶化した試料の状態で試験を行う。

表5 ISO15380(VG46)の規格内容
 
 ISO記号 HETG<HEPGHEESHEPR
分類 トリグリセライドポリグリコール合成系エステルPAO
密度@15℃mg/cm3報告報告報告報告
 報告報告報告<報告
外観@25℃ 透明透明透明透明
灰分
引火点
 COC min

 
185
 
185
 
185
 
140
動粘度
@−20℃
@0℃  max
@40℃
@100℃ min
 
mm2/s
 
 
 
 

780
41.4-50.6
6.1
 

780
41.4-50.6
6.1
 

780
41.4-50.6
6.1
 

780
41.4-50.6
6.1
流動点max-15-12-15
7日後
低温流動性
 
℃<
 
d<
 
 
 
酸価mgKOH/g
水分 maxppm1000100010001000
銅板腐食 max
@100℃3h
  
2
 
2
 
2
 
2
防錆性
蒸留水
  
合格
 
合格
 
合格
 
泡立ち max
Seq1
Seq2
Seq3
ml/ml 
150/0
75/0
150/0
 
150/0
75/0
150/0
 
150/0
75/0
150/0
 
150/0
75/0
150/0
放気性 max
@50℃
 
min
 
10
 
10<
 
1
 
12
抗乳化性 max
水3ml@54℃
 
min
 
 
 
d<
 
シール適合性
1000h min-max
NBR1
HNBR
FPMAC6
AU
硬さ変化
体積変化
引っ張り強度変化
伸び変化
 
試験温度




 


 
 
60
60
60
60
±10
−3〜+10
30
30
 
 
80
80
80
80
±10
−3〜+10
30
30
 
 
80
80
80
80
±10
−3〜+10
30
30
 
 
80
80
80
80
±10
−3〜+10
30
30
酸化安定性(TOST)
酸価増加が2になるまでの時間
 
 
報告 d
 
報告 d
 
報告 d
 
報告 d
Baader試験
72h@95℃max
粘度増加@40℃
 

 
 
20
 
 
20
 
 
20
 
 
20
 
FZGギヤ
 min
不合格
ステージ
 
10
 
10
 
10
 
10
ベーンポンプ試験
リング摩耗max
ベーン摩耗max
 
mg
mg
 
120
30
 
120
30
 
120
30
 
120
30

d)測定方法や規格値は供給者と使用者との取り決めに従う。